民主党代表選は、
菅直人首相と
小沢一郎前幹事長という実力政治家
の激突となり、両者は政治生命をかけた死闘を展開している。
国民の関心は、どちらが勝利するかに集まっているが、
代表選の公約として両者が示した政策には注視すべきものも盛り込
まれている。その一つが小沢氏が掲げる
社会保障費の地方交付制度
の創設だ。
小沢氏が発表した政策集をみると、「実務をすべて
地方自治体が行
っている実態を踏まえ、
社会保障関係費としてまとめて地方に交付
する」と書かれている。
地方向け補助金のうち
社会保障費関係は総額15兆円近くに及ぶ。
これまでのように医療、
介護保険といった制度ごとに国が負担する仕組みを改め、
まとめて地方に渡そうという考え方だ。
一括交付というのは、地方の裁量を広げる「立派な政策」に見えるのだが、やり方によってはさらに中央の権限が強まることにもなりかねない。まさか、今回の制度案には、小沢氏による“危険な罠(わな)”が潜んでいるのではないだろうか。
小沢氏の政策集によると、対象とするのは、
地方自治体が実務を担
っている国民健康保険(国保)、介護保険、
生活保護制度だ。
小沢氏は、2日の
日本記者クラブ主催の討論会で、
高齢者医療制度にも言及しており、
4制度を念頭に置いているようだ。
制度を変えるメリットはどこにあるというのだろうか。政策集では「各地方の実情に応じて、かつ地方の知恵を生かして、より効果的な福祉が行える仕組みに改める」としている。
日本記者クラブの討論会では、小沢氏は次のように説明した。「
国保も全くの黒字のところがある。医療、
病院にかかる老人も本当に少ないというような施策を自分たちで行
っているところもある」
確かに、医療費が
多くかかっているところ、少ないところなど、
市町村によって
社会保障費をめぐる事情は異なる。
***
***
それどころか、本格的な少子
高齢社会を迎えるにあたって「
社会保障制度は自治体ではなく、すべて国の責任でやるべきだ」
という意見も少なくない。
社会保障の需要が年々膨れあがる中で、
どれだけの歳出削減効果が見込まれるのかもはっきりしない。
小沢氏が言うように、大幅な無駄の
切り込みとなるのだろうか。
地方に回るお金の総額が減っても、
本当に今以上の行政サービスができるのかも怪しい。
社会保障費の
ような義務的経費の効率化は限界があるだろう。
小沢氏は「厚生労働省で全部どうだこうだと決めたものを、市町村にその通りにやれという話になっている」とも語った。これは、医療や介護の制度設計までを自治体が担えということなのだろうか。
民主党政権では、医療制度などは広域化が検討されているが、制度があまり細分化するとスケールメリットの効果が期待できなくなるのではという懸念も出てこよう。
地方には、「
三位一体改革」の際に、
国から地方へと税財源が移されたものの、
その総額が減らされたという苦い経験が残っている。
小沢氏の制度案に、自治体がすんなりと賛同するとも思えない。
小沢氏は政策集で「制度創設に向けて国民的議論をおこし、年内に具体的方針を示す」と期限を切ったが、ハードルは決して低くない。
ただ、
社会保障費の伸びを何らかの形で抑えなければ、
日本の財政は立ちゆかなくなることも事実だ。小沢氏には、
社会保障費の
一括交付金化制度案の疑問点を一つ一つ明確にしてもらいた
い。
0 件のコメント:
コメントを投稿